一点を見つめながら頸を動かしても何故目の前のものがぶれないのか?
その2 一点を見つめながら頸を動かしても何故目の前のものがぶれないのか?(前庭動眼反射)
一般に前庭動眼反射については以下のように説明されています。
「物体を注視しているときに頭を動かせば、眼球の位置がずれるので視野がぶれるはずである。しかし、実際には頭の動きに応じて眼球の位置を調節しているので視野はぶれない。
フィードバック制御で私達がこの調節を行っているとしたら視覚系の伝達時間(100msec)だけ遅れて調節することになり、一瞬ぶれるはずである。
しかし、実際にそのような現象は生じていない。
前庭動眼反射では、頭の動きに関する情報は、頭位の運動を検出する平衡器官から小脳を経由して前庭神経核に送られ、ここでさらに動眼神経細胞を介して眼の動きを調節するのに使われるが、眼球の運動によって視野のぶれが補償されたかどうかの情報は、前庭神経核へと伝達されておらず、負のフィードバック制御が行われている訳ではない。
にもかかわらず、対象物体から視線を外さずに注視し続けられるのは、頭部がどれだけ動いたかという情報をもとに、視線を一定に保つのに必要な眼球の回転角を小脳で計算し、この目標値に向かって運動筋をフィードフォワード的に制御しているからである。
フィードバックはエアーコンデイショナーなどで用いられている原理で、一旦温度を測定し、その後制御しますのでどうしても時間がかかってしまいます。
その時間差がヒトの動きでは問題になります。
しかし、ここで述べているように予め計算しているようだと脳は頸を動かすたびに緻密な計算を強いられることになり大きなコストを支払わなければなりません。
それではどのような仕組みが考えられるでしょうかここで実験をしてみましょう(von Helmholtz 1867:Handbuch der Physiologischen Optik 1st ed.)
右目を右手で塞いで、左目は開眼し、左右に眼球を動かします。この時、目の前の景色はぶれたりしません。
では今度は、同じように右目を右手で塞いで、左手で左目をまぶたの上から外から内へ押して見てください。皆さんの目の前の景色はぶれます。
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