【続】本当のパーキンソン病の話をしよう-1
私のブログではパーキンソン病に関してのアクセスが最も多いので今回続編を書くことにしました
最近私のところに受診された患者さんから始めたいと思います。
このパーキンソン病の患者さんは、軽症で数キロ歩行可能で無治療の方です。
私は当面無治療で経過をみることをお勧めしましたが、患者さんは、両大腿部が重いのでそれを取り除いて欲しいと強く要望されました。
そこで私は100 ㎎ドーパミンを補充しました(朝1回です)。
以前のブログに書きましたように、体全体の錐体外路障害は均一ではありませんので、最も障害された筋(或いは筋束)に必要なドパミン量は、その他の筋に対しては過剰になり、それを持続的に刺激し続ける(朝、昼、夕、寝る前など)と神経細胞障害が起きると私は考えているので、薬剤は必要最低限からスタートします
この患者さんにおいては、この処方で大腿の重さが随分楽になられました。
そこで処方薬は2カ月としました。
ところが、一月も経たない時期に「歩けなくなった」ということで受診されました。
元来無かったすくみ足が出現したのです。
ここでの要点は、「起床時はすくまない」、ドーパの血中濃度が比較的高いと予想される午前中ではすくみ足はそれほど問題にならない、午後になると頻度が多くなり、夕方5時には最もひどいすくみ足状況になります。
以前のブログに書きましたようにすくみ足はドパミン補充療法を開始して生じることが多いのです。
しかし、ドパミン100 ㎎投与でで、4週間以内にすくみ足を呈した患者さんは私の経験では初めてでした。
薬剤が全く切れている起床時は、調子が良いのですが、低濃度のドパミンが受容体に付着した状態では、受容体はtonic stimulationの状態にあり、自己の運動指令による神経細胞の興奮(phasic stimulation)が伝達されないのです
それが薬剤性の無動やすくみ足を発症させる原因なのです。
それを克服しようとして、常に高用量のドパミン刺激をするというのが神経内科の常道ですが、私の場合は少し先のことを考えてそのような処方はしません。
そこでこのような方においては、ドパミン系の薬剤は使用しません。
非ドパミン系の薬物療法が重要なポイントと考えています。
患者さんはそれぞれ違いますので、同じような処方をしていると様々な問題が生じてきます