【続】本当のパーキンソン病の話をしよう-2
Drug holiday
今回は1980年代に流行したdrug holiday(休薬療法)についてお話をしたいと思います。
当時はこれに関する論文が数多く発表されており、ネガテイブな意見もありましたが世界中で行われていたようです。
Wearing offがある方にこの治療方法を行うと、多くの方で、wearing offが消失すると記載されています。
幻視やすくみ足についても改善します。投与に必要なドパミン量も半減すると言われています。
1980年代の論文では、wearing offなどの上記症状は薬剤の副作用と記載されています。
しかし、近年の論文では病気の進行で生じていると記載されている場合が多いようです。
いつから「薬剤副作用」が「病気の進行」にすり変わったのか不思議です
しかし、休薬療法においては、患者と介護の負荷、誤嚥性肺炎や肺梗塞(下肢静脈血栓から)
などのリスクが存在する上に、半年後或いは一年後にまたwearing offが再発する場合が多いので、
深部電極刺激という新たな医療技術に取って代わられたように思います。
私どもの最近の経験を少し紹介します
Wearing offがなく、腰曲がりが強く、すくみ足で転倒するという患者さん2名、2週間抗パーキンソン薬を全て中止しました。
お一人の方は、薬剤オフでADLが改善しました(無動がやや強くなったがすくみが消失した)。
この方はドーパ製剤100mgで良いコントロールとなり退院されています。
もう一人の方は、腰椎圧迫骨折で安静を余儀なくされた方です。この方は休薬中に振戦が
やや強くなりましたが、上肢の機能低下は明確ではなく食事も摂取出来ていました。
2週間の休薬療法後に、やはり100 mgからドーパ製剤を投与し、現在休薬療法以前のドパミン量の
半分強で良いコントロールになりました。すくみ足は消失しています。
Wearing offのある方に対しての休薬療法はどうでしょうか
Off時に無動が強い方は、全ての投薬をオフにするとナースコールも押せなくなる場合があります。
食事も、トイレも全介助となります。
完全投薬中止後10日目に、ドパミンを投薬していきます。
100 mgで少しずつ動けるようになります。
少しづつ投与量を増加させ、非ドパミン薬も併せて投薬をすると確かにwearing offがほとんど無くなる方もいます。
以前は、ドパミンを投薬しても効くのが遅かったり、効かなかったりしたことが多かったのですが、投薬すれば必ず効果を示すようになります。
患者さんや医療従事者にとっても大変な方法ですが、1980年代に報告された内容は概ね正しいように思います。
私には、wearing offはやはり長期薬剤投与の問題であり、病気の進行ではないように思えてなりません。
無動が強くない方にとっては大変良い方法だと感じています。